悪魔の手先 NO,1 作:キョン
電車を降り学校への道を歩き出す。
バカップルや友達同士で話しながら歩く生徒。
当り前のように平和について何も感じていないクズども
俺はそんなクズどもが嫌いだった。
俺は天王 睦(てんのう むつみ)中学1年だ。
クラスの中ではいわゆる異人だ。
誰とも接しない。誰とも触れ合わない。班の中でさえ一応存在しているだけという、
世間一般から見ると変わった人、という位置づけだ。
確かにそれは一理あるだろう。俺は親を殺している。それだけで十分異人だろう。
席は必ず窓側の一番後ろ。そこだけ一つ孤立している席で、周囲に人が2人しかいない席だからだ。
俺は周囲の人間に自分の人生を話したことはない。知ったところで、どうにもならないことをすでに知っているからだ。
俺を事情聴取した精神を見る医師とやらだって、俺の核心的なところには一切触れていない答えをだした。
「私は君を一番よく理解している」などとほざいていたが、俺を一番理解しているのは俺自身だ。
そんなことも分からずに精神を見るなどとほざくとは、片腹痛い。
そんなことを考えながら、俺は周りを見渡した。
クズ、クズ、クズ、クズ、クズ見渡す限りクズの群れ。
そんなクズどもは俺と一切かかわりたがらない。俺も奴らとはかかわらないように遠ざけている。
「あの子はきっと何か事情があるのよ」などとほざく奴は排除。
「でもクラスメイトだぜ」などとほざく奴も排除。
「私はあの子のこと信用してあげたいの」などとほざく奴も排除。
排除、排除、排除、排除、排除、排除、排除、排除。
そうしていると、俺に近づく奴はほぼいなくなった。
だから俺は一日を基本平和に過ごしている。
だがそこまでしているのにもかかわらず、俺に近づいてくる変人もいる。
「どうしたんだ?」
今俺に話しかけてきた奴が俺の前の席の出本 一哉(でもと ひとや)
こいつは俺にしつこく話しかけてくる奴の一人だ。
「・・・・・・・・・・」
いちいち俺は反応しない、あんまりにもウザい時以外はな。
「なんか考え事でもしてんのか?」
「・・・・・・・・・・」
「…そうかい」
何が分かったんだこいつは?
とりあえず無視したらそいつはもう一人の変人と話し始めた。
そいつが門戸 水夜(もんと みずよ)だ。
こいつは基本無口のやつらしく、授業中にも一切の音を立てない、眼鏡をかけたクールな奴らしい。
よく出本と話をしているから、仲がいいのだろう。
まぁ俺には関係ないことだ
そこでチャイムが鳴った。全員急いで席に座りだす。
教師が入ってくると、HRが始まった。
連絡事項は今度の修学旅行の班を決めるというものだった。
「班か…」
修学旅行はともかくとして、班を決めるというのがいやだった。
あんな奴らと一緒に行動するなんて、考えただけでも虫唾が走る。
{ナレーター(以下ナレーさん)}それでも、班は決まるものであり、運命の神様とはそうそういないものなのである。{ナレー終}
「天王は…出本と門戸と同じでいいな?」
いやだと言ったらどうするつもりなのだろうか?そこらへんも考えて発言してもらいたいな。
「はい」
俺は簡潔にそう答えた。
「もう一人は…近いから水岡でいいな」
水岡とは水岡 七海子(みずおか なみこ)のことである。
俺のクラスは40人であり、校外学習は4人1組で行われる。
校外学習のウザいところはそこなのだ。
{ナレーさん}この修学旅行は「何時如何なる条件に置いても、信頼できる友人たちと協力し仲を深める」というスローガンなのである。
つまり4人のうち誰かが困ったことになったら、他の人で助けなければならないのである。{ナレー終}
なんともバカみたいなスローガンだな。
そう感じつつも、俺は班のメンバーと机を付けた。
「えー、では我が4班のメンバー諸君、この班のリーダーは私でいいかな?」
そう真っ先に発言したのは出本である。
「ちょっと、何であなたが班長なの?班長にふさわしいのは私よ!!」
こいつが水岡である。
「私はこのクラスのクラス会長なのよ?成績も全クラス中6位という成績を持っているし、私がやらなくてどうするの!」
成績で班長が決まるものなら、俺と門戸はどうなるんだ。
そう思いつつ、こいつらの言いあいを適当に聞き流していた。
「はぁ?成績で班長が決まるかっ!!そんなこと言ったら天王はどうなるんだ!!」
「はっ!元引きこもりなんて信用できないわね!!もう一つ言っておくと、その引きこもりを解消してあげたのは、この私なのよ!!」
それは事実である。俺は特待生制度で通っているから、成績さえよければ学校に通えたので、テストの日だけ通っていた時期があった。
その時にこいつが俺の家に毎日きて、「オラァ!!出てこいやぁ!!テメェが来ないせいでウチのクラスは全員そろうことがないんじゃぁ!!」
などと叫びつつ押しかけてきたので、仕方なくここに来るようになったのだ。
あとで知ったことだが、こいつがは俺が成績1位なのにイラついているらしく、
教師から説明を受けたのにもかかわらず、俺の家に押し掛けていたらしい。なんとも迷惑な話だ。
そんなことを考えていた間に、言いあいは白熱していた。
「私はハ○ヒシリーズを読破しているわ!!」
「そんなこといったら俺はデ○トラ・ク○ストシリーズを1〜3章まで完全読破してるっつーの!!」
「私はほかに、○斗の拳と○闘士星矢も完全読破しているわ!!」
「俺だって○魂と○火の炎も完全読破してるっつーの!!」
もはや修学旅行にまったく関係ない話に発展している。いい加減決めてもらいたい。
門戸がやってくれると速いのだが…
そう思いそっちを見ると、本を読んでいる門戸がいた。
そいつは明らかに顔に怒りの表情があった。さすがに怒っているらしい。
ギャーギャー言いあいをしている中、門戸がついに動いた。
バンッッッッという音がしたかと思うと、門戸はこう言いだした。
「お前らみたいに自分のことしか考えてない奴は信用できない」
そう言うとまた本に目を戻した。さっきの音は門戸が机を、持っている文庫本で叩いた音だった。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
二人は黙ってしまい、結局班長は俺がやることになってしまった。
本来なら門戸がやるべきなのだろうが、
「やだ、タルい、めんどい」
で片づけられてしまった。
俺もやりたくなかったのだが、
「俺もやり・・・」
「じゃあ、天王だな」
「おい、人の話をき・・・」
「そうね、天王ね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
という
感じで俺は班長になってしまったわけである。
その2週間後、ついに修学旅行が始まった…。
=作者より=
今回は異様に長くなってしまいました・・・。
予定ではこんなに長くなるとは思ってなかったのに・・・。
ではでは、この作品に多大な時間を費やしてくださった方々に感謝を。
次回をお楽しみに!!
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