人鬼 作:楓
この日、ある一人の中学生の人生を大きく変える出来事が起きた。
「こ・・・ここはどこだ」あたりを見渡すといつも通っている通学路に立っていた、ふと手を見てみると見慣れない刀を持っていた。
「なんだよ・・・これ!」刀は血でべっとりと赤く染まり、衣服も血で染められていた。
夜中でよく見えないが目の前に何かが倒れていた、月明かりが出てきて倒れていたものが姿を見せた。
「!!!!」そこには予想もしていなかったものが倒れていた、「これって・・・まさか」
そのものには角があり人間の2倍以上の大きさでとても恐ろしい顔立ちをしていた。
「鬼」その一言と共に意識がうすれていった。
目をあけるとそこは自室のベットだった、「なんだ、夢か」
ピロロロロロ♪机に置いていた携帯が鳴った、見てみると幼馴染の佐伯綾香からだった。
「もしもし、出雲君おはよういきなり電話してごめんね。今日学校が終わったら出雲君の家で文化祭の打ち上げをしたいと思っているんだけどいいかな?」
「俺の家で?」出雲が聞くと佐伯は「だって出雲君の家すごく広いから、それに文化祭が終わってからすぐできないからみんなが大丈夫な時に出雲君の家でやろうねって言ったら出雲君はいいよって言ってくれたじゃん」出雲はそのことをすっかり忘れていた。
「じゃあ、今日の午後五時から始めるから一時に及川さんと一緒に準備をしに行くからよろしくね♪」来る前に何かいるか聞こうとしたが既に電話は切れていた。
服を着替えて顔を洗いにいった出雲はあの夢のことを考えていた、なぜならばいつもみていた夢と全く違う感覚があったからである。
考えても仕方がないと思って出雲は思い切り顔を洗った、12月の朝は冷たかった。
テレビをつけニュースを見ていたら聞き慣れたニュースが流れた、それは今大量に起きている通り魔事件であった。
通り魔が現れるのは決まって夜中で被害者の体には普通の刃物ではありえない傷痕がついていて目撃者の証言ではとても大きな姿をした鬼のようなやつという証言が多かった。
「鬼?」出雲は今日夢に出てきたあの鬼ではないかと考えたがそんなことありえないと思いテレビを消し二人がくるのを待った。
一時なるとインターホンの音が聞こえた、佐伯たちが来たのである。
「こんにちは」二人がたくさんの食材と荷物持ってきた、泊まるつもりでは?と思うくらい荷物の量は多かったのである。
「おいおい、そんなに持ってきていったい何をするつもりだ。」
出雲が言うと及川が「今日は出雲さんの家でお世話になるから今日1日泊まることにしました。」出雲の予想は的中していた。
「今から下ごしらえとかしたいからキッチン借りてもいいかな?」佐伯がそう言うと、出雲は「ああ、好きに使ってくれ佐伯の料理は美味いからな」というと佐伯と及川はすぐさまキッチンに向かっていった。
五時になるとほかに呼んでいたクラスの友達が来た。
「出雲来たぞ!」大きな声で来たのは幼稚園からのなかだった後藤だった、後藤に続いて信繁と松岡が来た。
「良い匂いがするな」松岡が言うとキッチンのほうから佐伯がみんなを呼ぶ声がした、「もうできたみたいだな」出雲が言うとみんなはリビングに行った。
リビングに入るとテーブル一面に料理が並べられていた、「わぁぁぁぁ」出雲たちは料理の量と完成度に思わず驚いてしまった。
テーブルに座ると乾杯の合図と共に打ち上げ会が始まった。
「本当に佐伯と及川は料理が上手だな」信繁がタンドリーチキンパイ包み焼きを食べながら言った、これは佐伯の自信作の一つである。
みんなで食事をしながら会話をするのは楽しかったが出雲は頭の片隅であの夢のことをまだ考えていた。
「あっ家から文化祭のビデオを持ってくるのを忘れてた」いきなり佐伯が言った。
「ごめんけど家にとりに行ってくるね」佐伯が言うと出雲が「俺も行くよ」といった。
二人が玄関に行くと見慣れない物が置いてあった、「なんだろうこれ?こんなもの来た時にはなかったのに」佐伯が言うと出雲が恐る恐る置いてあった物をよく見たら刀だったのである。「!!!」出雲はあの夢に出てきた刀と全く同じものだということに驚いて少しの間声が出せなかった。
佐伯が心配そうに出雲を見ていた、「大丈夫だ、気にしないでくれ」そう言うと出雲は刀を持ったまま佐伯と外に出た。
外はもう日が暮れ夜になり雪も降っていたのでとても冷え込んでいた。
歩いているとあの通学路に入ったその時に前方から誰かがこちらに向かって歩いてきていた。
だがよく見ると体は大きくとても人とは思えない体つきをしていた、やっとよく見えるぐらいの距離になったとき佐伯が悲鳴を上げた「きゃああああ」
出雲もそれを見て固まってしまった、夢がいま現実に起きている。
夢と同じように本当に鬼が現れた、鬼は鋭くとがった爪をこちらに構えいまにも襲いかかってきそうだった。
「このままじゃ」・・・殺せ・・・「守らなきゃ」・・・あの鬼を・・・あいつを・・・・
・・・・・・・・・・・・・「殺す」その瞬間出雲は鞘から刀を抜き鬼が攻撃を仕掛けてくる前に切りつけた。
「出雲君」佐伯はそっと語りかけた、そこには体中血で染まり刀からは血を滴らせていた冷徹な表情をした出雲が立っていた。
「・・・・・・」今、ここにいるのは彼女の知る出雲はいなかったのである。
コメント
3点 413 2010/02/25 20:06
面白かったです。
タンドリーチキンパイ包み焼きって・・・