悪魔の手先 NO.7 作:キョン
「おい!!どこ行ったんだあいつらは!!」
出本が叫び、あたりを見る。だがどこにもいない。
「くっそ、こんな崖だらけの所じゃ少し歩いただけで落ちちまうぜ」
落ちる…こんな所から落ちたら100%死ぬな。そう思いながら俺はあることを言った。
「落ちてないといいな」
そう言うと俺は風よけに入った。
出本は驚いたように言った。
「おい、探さないのか?」
俺は出本に背を向けて答えた。
「俺が今までお前らと行動していたのは、これのくだらないスローガンのせいだ。自分の身に危険もなかったしな。
だがここで探しまわったらどうなる?ほぼ間違いなく崖から落ちるぞ?」
出本はうっと言葉に詰まったようだ。
「た、確かに落ちちまうかもしれないな…」
俺はさっきよりも少しトーンを下げていった。
「だろう?俺はお前と今話しているのはこっちに特に害がないからだ。もしも害があるんなら俺はお前とも喋らん」
俺は後ろで声をかみしめて唸っている声が聞こえた。
「わかったか?俺はもともとこういうやつなんだよ」
俺はそう言うとまぶたを閉じ、睡魔が俺を夢の世界に運んで行った。
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そのころ…
私と水岡(私は門戸です)は謎の屋敷に入っていた。
私たちは風よけをあの男子どもが作っている間に、この謎の屋敷を発見したのだった。
「誰もいないみたいね…」
屋敷の中はとても静かだった。無音や静寂などと言う言葉では表せないほどの静けさだった。
まるでここだけ周りの世界と切り取られているような感じだった。
小声でさえも反響し、耳にキーンという不快な音を感じさせるような静けさだった。
「本当ね」
やや遅れ気味に返事をし、すたすたと歩いて行く。
ゆっくりするよりもここの安全の確認をし、安全ならここで一晩を過ごそうと考えていた私は、眠気の助けもあってか自分でもわかるほど早足で歩いていた。
屋敷は…いや屋敷というより館という言葉のほうが似合いそうな、小説で「幽霊の出る館」と表記されてもおかしくない風貌をしていた。まぁこれも小説だが。
ところどころにクモの巣が張ってあり、台所へ行くと調理器具が出しっぱなし、ただの部屋でも謎のシミわんさかという徹底ぶり。
ここは廃墟か?などとも考えつつ、一階とニ階を歩きまわり安全確認をした。
「数だけは多いのね…」
一階ニ階合わせていったいいくつの部屋を歩き回ったのだろうか。
まるで部屋がループして、同じところを延々回り続けているような気さえした。
部屋の中はどこも同じで、ソファー小さなテーブル、その上に小さなライト。
ベッドは穴だらけでほこりまみれ。ほこりまみれはどの家具も同じだったが、随分と使っていないようだ。たまに石とか岩が置いてあることもあったが、家具は全て同じだった。
「これなら大丈夫そうね」
一通り見回った結果、古いが建物自体の作りがしっかりしていて、崩れることはまずなさそうだ。部屋も4つだけまだまともな部屋があったので、全員寝れるだろう。
その瞬間、ギィィィィィという音とともに扉が開いた。
「え?誰?」
この声は反響して入口の所に聞こえたのだろう。
「お〜い、その声水岡門戸かぁ?」
声の主は出本のようだ。走ってくる音が聞こえたかと思うと、すぐに階段を上ってきた。野球部は速い。それよりもかなり遅く天王が歩いてきた。
「おっ、やっと見つけた」
「ちっ、何で俺も…」
2人は私たちを探していたようだ。
「いや、こいつは探したと言うか、寝ているのを俺が叩き起こして耳元で叫んで、いやいやついてこさせただけだけどな」
出本の左ほほと右ほほは赤くはれていて、おまけに足にはアキレスけん固めの跡、四の字固めのあと、首の前の筋肉が異様にはっているのはキャメルクラッチでも喰らったのだろうか。
一番多いのは右の手の甲と左の手の甲にある爪を突き立てられたうえ、ねじられたような跡だったが、なんだかんだで見てるほうが一番痛いのはその傷だった。
「こいつほんと起きなくてさぁ。低血圧と言うかねぇ…明らかに度を超えてたぞ。おんなじとこばっかつねってくるしさぁ…ここ何か10回近くつねられたんだぞ?痛いも何も感覚がなくなっちまったよ」
そこには異様に三日月型にへこんだ傷が二つあった。凄く痛そう…。
「つーかお前らは何で無言でここに来たんだ?」
いやぁ〜驚かせてあげようかと…などと言う理由ではない。
ぶっちゃけあれ作ってんのに集中し過ぎた彼らが、聴覚をあまり機能させていなかったということもあるのかもしれないが、主な理由はめんどくさかったからだろう。
なんとなく、本当になんとなく彼らと…いや天王と離れたかったからだ。
理由は不明だ。本当になんとなくとしか言えないのだ。言うとなれば…なんだか秘密が解き明かされてしまうような…そんな危機感を感じたからだ。何だろう。
まぁ見つかったからいいと天王は言った。
「だが、何でこんな所にこんな建物が建っているんだ?」
たしかにそうだ。高尾山に別荘…あまり考えられないけど。
「まぁ〜いーじゃん。つーかお前ら良くこんなところ見つけたな、お手柄じゃん」
ほめられたが特別嬉く感じることもなく、
「そう思うなら食材でも取ってこいや。そしてなんか作ってこい。調理器具は散乱してたけど使えそうだったから」
と言ってやった。
「え?料理はちょっと…」
と困った顔になった。そう、こいつは料理がからっきしなのだ。まぁ知ってたけど、そして自分もできないけど。
「じゃあ私が作ろうか?」
そう言ってきたのは水岡だった。私たちは目を見張っていった。
「え?できんの?」
「ばかにしてんのあんたら?私はこう見えても女の子ですから料理の一つや二つ…」
言葉のナイフがグサリと刺さる。
「俺もやってやるよ。自分の分だけな」
と天王。ますます目を見張り私たちは言った。いや叫んだ。
「ウェェ!?アンボッベロバァ!?」
ええ!?あんたできんの!?がこんな風になってしまうほど驚いてしまった。
「俺は一人暮らしだからな。一応多少はできる。つーか女は当り前として、今の時代、男も料理の一つや二つできて普通だろう。つーかモテんだろそんな奴」
言葉のチェーンソーでえぐられた。ナイフなんて甘いもんじゃない。チェーンソーが2人に突き刺さる。
えー、あんたそんな目的で料理やってんの? いや、だから一人暮らしで自然に身に着いたんだって言っただろうが。
そんな会話を受けながしつつ
普通…男…モテない…
料理…普通…当り前…女のこ…
2人の脳内では言葉が現れては消え、あらわれては消えを繰り返していた。
「まぁとりあえず、料理してくっから」
2人はショートしつつそれにはーいという返事を返した。
その返事を聞き、天王ら2人は台所へ向かった。
<悪魔の手先NO.7 完>
=作者より=
どうでしょうか?今回は。
今までよりも会話を減らして、状況説明を増やし、本当の小説に少しでも近づけるように自分で考えた結果なのですが…!
ちなみに今回は門戸視点で終わっていますが、次回は天王視点に戻りますので。
それでは、このような拙い小説に時間をかけてくださったあなたに感謝を。次回乞うご期待!!
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