鏡の亡霊 作:キョン
みなさんは覚えているだろうか…「放課後の教室」なる私の古い作品を…
みなさんは知っているだろうか…それに「鏡の亡霊」なる怪談があったことを…
なんとそれを今回やります。
<鏡の亡霊>
これは鏡の亡霊と、それと対峙する一人の青年、そして一人の少女の物語である…。
少年はただの一般人だった。何の変哲もない、普通で普通な普通の少年だった。
少女は姉が「亡霊」に喰われていた。姉は異常なほど妹を愛していた。
親族のいない少女はそれが愛だと思って過ごしていた。少女は復讐を誓いそれに対抗するすべを模索していた。
少女は古代の文献を読みあさり、祈祷師、陰陽師、それらに準ずるものを全て調べ上げ、もっとも効率が良いものを探した。
そして一つのカギを握った。それが少年だった。
少年は約2400年前の、「奇跡の祈祷師」と呼ばれていたものの末裔だったのだ。
しかし長い年月により、その事実は薄れていった。
少年は少女へ協力し、「亡霊」の退治を決意した。
少年らは、「亡霊」の退治方法を模索した。
他の陰陽師などに頼む…という手は不可能だった。
実際次に頼みやすい、隣の市の陰陽師の子孫を訪ねたが、掛け合ってくれなかった。
これでは他も同じだろうと判断し、少年らは2人でやることにしたのだ。
鏡の亡霊は文献がほとんどない。
それは神隠しのように有名ではなく、被害も少ないため。
神隠しのように人が消えるのではなく、存在が抹消されるための2つの理由がある。
存在の抹消と言うのは「いなくなる」のではなく、「いなかったことになる」のである。
もともと生まれていない、つまり文字通り「存在がなくなる」のであった。
ごくごく稀に、少女のように覚えているものもいるが、被害が少ないうえに、抹消されたものは誰も覚えていないのが基本のため文献が少ないのだ。
やっと発見した資料は「鏡の亡霊はとりこまれた人は次の亡霊になる。」と書かれてあった。
「亡霊」は人類が興味本意で行った「映し鏡」から初めの一体が誕生し、次の被害者が「亡霊」になる。その次は次の被害者が…その繰り返しらしい。
「映し鏡」とは2枚の鏡を向かい合わせにすることで、そうすると何枚にも鏡があるように見えるのことだ。
昔はこれの13番目に怪物がいるなどとも言われていた。
彼らは鏡の亡霊を呼び出す方法を探した。結果、鏡の亡霊は「次の被害者」がいる、もしくは霊能力を持っているものが近くにいる時に「映し鏡」をすることで出現することが判明した。
「次の被害者」は「亡霊」が最も恨みを持っているものらしい。
少女と少年は少年が霊能力を持っているため、「映し鏡」を実行してみた。
「亡霊」は…出現した。
「亡霊」は少女らもうすうす感づいていた通り、少女の姉だった。
少年は「亡霊」との退治方法を「亡霊」の恨みを持たないものだと仮定し、少女を盾にした。
少年の仮定は間違っていた。姉は少女を通り抜け少年を攻撃した。
姉は異常に少女を愛していた。
異常なほど固執し、異常なほど大切にし、異常なほど愛した。
愛し、愛し、愛し続けた。それは実の妹という壁も同姓という壁も打ち破る気持ちだった。
その後、姉は「亡霊」になった。恨みの相手は「妹に近づく男」だった。
しかし、「鏡の亡霊」の弱点は出現するために必要なものである「霊能力を持つもの」それに攻撃ができないことだった。
誰でも「出現するために必要なもの」は弱点ではないだろう。という先入観を持っている。それを逆手に取っていたのだ。
思い返してみてほしい。少女は「亡霊にされたものを覚えている特別な体質」だったのだ。
つまり、少女には特別な霊能力があったのだ。
少年は血が薄まっていくとともに、霊能力などとっくに消えてしまっていたのだ。
だから姉は少女の体を通り抜け、少年の体を攻撃したのだ。
少年は霊能力を持っていた家系で最も説得が簡単という理由から少女に選ばれたのだ。姉を救い出す"餌"として…。
少年は亡霊になった。少年の恨みの相手は「少女」だった。
少年はうすうす気づいていた。姉の愛の異常さに少女は気づいていたのではないか。
2人で探したとはいえあんな短時間で亡霊の資料が見つかるなら、少女は発見していたのではないか。
うすうす気づいていた。自分には特別な能力などなく、少女は持っていることも…。
それらがすべて重なりあい、少年は真実を導き出した。「自分は"餌"にされたのだ」と…。
少年は少女への復讐を誓った。しかし少女は「映し鏡」を行わなかった。
その後少年が外に出たときにはもう、少女は死んでいた。
少年はその時「映し鏡」を実行したやからを皆殺しにした。霊能力を持つものもすべてだ。
あまりの怒り、悲しみ、絶望、それらの気持ちにより、少年は「鏡の亡霊」から「本物の亡霊」になってしまっていた。
「鏡の亡霊」は「本物の亡霊」になり、「本物の亡霊」に殺されたものは「鏡の亡霊」になった。
しかし、今回の鏡の亡霊は少年が怒り、悲しみ、絶望により「本物の亡霊」になったように、
少年の怒り、悲しみ、絶望により「映し鏡を行ったものを皆殺しにする。そしてそれらすべてを「鏡の亡霊」にしてしまう」という「鏡の亡霊」となった。
「鏡の亡霊」も「本物の亡霊」も、もう人間には戻れなくなってしまった。少年によりすさまじい力を得る代わりに、「人間」としての存在意義を失ってしまった。
「鏡の亡霊」は今も増え続けている。「本物の亡霊」に殺され、存在を抹消されながら。
そして「鏡の亡霊」もその時を待っている。
そう、あなたが「映し鏡」を行うことを……。
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