悪魔の手先 NO.8  作:キョン

台所に着いた俺たちは早速料理を始めた。台所にはたくさんの調理器具が散乱していた。

食材は冷蔵庫にわんさか入っていた。

食材だけでなく調味料も完全完備だった。

食べれないだろうと考えていたが、不思議な事に1つたりとも腐っていなかった。

賞味期限が記入されている袋に入っている食材などはなかったが、それでも大丈夫だろう。

「何でだろうね?家はこんななのに食材だけはしっかりしているなんて」

とても不思議そうに水岡は言った。同感だったが、

「食えそうだからいいだろ、そんなに気にすることじゃねぇしさ」

「いや、そんなに軽く言わないでよ…食中毒とかあったらどうするのさ」

少し焦ったように水岡が言った。

「あ〜大丈夫だ。とりあえず出本はバカだから。バカはインフルエンザもひかんからな」

心配すんな。水岡は「でも…」などと言っていたが、このままでは何時まで経っても料理が始まらない。

俺はもうその先の言葉を無視した。そしてガチャガチャと周りをあさりだした。

とりあえず包丁と火とフライパンでもあれば、調味料も食材もわんさかあるから何とかなるだろう。

そう思い探した結果、全てすぐに見つかった。火はガスコンロを使うことにした。

水岡は反論をあきらめてうんしょうんしょという声をだして、鍋のような大きなものを取り出していた。

そんなに作んなくていいのに。どうせ3人分しか作んねぇんだしさ。

そう思いつつも突っ込みを入れる気力さえなく、睡眠を邪魔されたことへの怒りしか湧いてこなかった。

ゴトゴトと音とたてて俺が料理をし始めた。それの少しあと水岡が料理を始めた。

料理と言っても野菜などに火を通して食えるようにしただけだ。まずくはないと思うが別にうまくもない。

簡単な下ごしらえを終わらせて、火で炒めた。皿はなかったので(こんなに食材余らせてんなら皿を用意しろ、皿を)そのまま持って行った。

あいつらがいる部屋に戻ると、某漫画で燃え尽きたボクサーみたいに真っ白くなっていた。

何やらぶつぶつ呟いていたが気にしない。俺は自分の分を食べ始めた。しばらくして水岡が「ご飯ですよ〜!」叫んであのでっかい鍋を持ってはいってきた。

出本と門戸はピクッと反応し飛びかかった。

「飯ぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!」

と奇声を発して水岡を押しつぶした。「ひゃん!」という声を発して倒れた水岡は鍋が2人に奪われてえらい勢いで胃に流し込まれるのを、茫然自失と言った体で見ていた。

「お前ら何なんだ」というツッコミを入れて自分の飯を食っていた。

水岡はあいつらの食べっぷりを見てうれしいような、ちょっと困ったような顔をした。おそらく自分の分を心配しているのだろう。俺は何も残らないに一票。

予想の通りガランガランという音をたてて、中に入っていたものが全て食べつくされた鍋が地面に落ちる音が聞こえた。

それを耳で確認しつつ俺はフライパンで同じ料理を作っていた。

ここは良く音が反響する。そのため、大きな音は少し離れたここにも聞こえた。

「あいつらの胃袋は四次元ポケットにでもなってんのかよ」

そんな感想で突っ込むといい感じに火が通ったのでまた部屋に向かった。

そこには腹いっぱいということなのか、ヒッヒッフー、ヒッヒッフーと呼吸をしている出本と門戸。それにそれを苦笑いして見ている水岡がいた。

「あはは…よくあれ食べれたねぇ〜」

呆れと、驚きと、どうしようかという気持ちが1:2:3位の表情をして水岡は2人を眺めた。

「ご飯…また作らなきゃ」

「ほら」

俺は台所に向かおうとする水岡にさっき作った料理を渡した。

「また作んのめんどうだろ、今ついでに作ってきたから食えよ」

本当にただのついでだったのだが出本はニヤニヤとこっちを見ていた。あとでシメとくか。

水岡は双眸を限界まで開き料理と俺の顔を交互に見比べた。なんだ毒でも入ってると思ってんのか?

「どうした、食えんものでも入ってたか」

「いやそうゆうわけじゃないけど、意外な事をするなぁって」

余計な御世話だ。黙って食え。

そういう視線を送ると、気づいたようでありがたく頂きますと言って食べ始めた。

出本のニヤニヤが悪化しているように思われる。門戸まで初めやがった。お前らシメないで絞めてやろうか?あん?

ったくバカ共が。そんなわけねぇだろうが。

「俺はもう寝るわ」

そう言って下の寝る予定の部屋へ向かった。門戸と出本の間を通る時に顔面にひざを落としてやった。

ちなみに、俺たちが来る前に確認していたらしい門戸と水岡が「下のあの4つの部屋以外はすっごく汚いよ」とう理由で俺たちはそこで寝ることになっていた。

出口に近い方から門戸、俺、出本、水岡という順だ。

俺はうまく開かないドアを力任せに蹴って自分の部屋に入ると考えをまとめ始めた。

俺らはここにきてから明らかに何かがおかしい。

細かい点は省くとして、大まかにいえば

【高尾山という狭い範囲なのに俺らがまだ発見されていないこと】

【小学生でもハイキングができるらしいこの高尾山で、謎の館が建っていること】

この二つだろう。仮に迷ったことは偶然だとしてもこの二つだけは明らかにおかしい…。

いくら考えても明確な答えはわからなかった。当り前だ、不確定要素が多すぎる。

考えられうる中でも、「謎の生命体に操られた」とか「不思議な力に集められている」とか現実離れし過ぎている。

それにこの二つはそれぞれ「謎の生命体とはだれか、その真意は、俺たちが選ばれた理由は」という謎と、

「不思議な力を発している本体とは、その真意は、俺たちが選ばれた理由は、なぜ俺たちにしかその力が働かないのか」という謎が残る。

俺は頭をかきむしった。いくら考えてもわからないことを考えるのはきつい。

俺はもう諦めて寝ることにした。

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そのころ、私は天王が作ってきてくれた料理を食べていた。それは料理と言うには程遠いもので火の通った食材と言う感じだったが、ありがたく頂いた。

御世辞にも「凄く美味しい!!」とは言えないものだったが、まずくもなくまぁ普通だねと言う感じだった。

しかしか不思議に温かく感じるものだった。いや、熱通してるんだしとかそういう意味ではなく、なんだかわからないけれど不思議な温かみがあった。こんな感覚は初めてだった。

そんな事を考えながら箸(この場合箸がなくてフォークだったが)を進めていた。

食べ終わっても門戸と出本は苦しそうに仰向けに寝っ転がっていた。やっぱり食べすぎだろう。

少し呆れていると先ほど食べ終わった空っぽの鍋が目に入った。

ほっとくわけにはいかないので鍋を拾い上げて、その中に自分が食べ終わったお皿を入れた。乱雑な食べ方をしたせいか、鍋のふちも持ち手も入っていたスープでビショビショになっていた。

仕方ないので鍋の底を両手で頭の上に持ち上げて、キッチンに向かって行った。

手のひらで鍋の底に残っている温かさを感じながらキッチンへの道を歩気ながらちょうどいい機会だと思い、今までも疑問をまとめ始めた。

此処に来てからの疑問はたくさんある。この家もたしかに甚だ疑問だ。

建てたのは一体誰なのか。ここに建てた理由は一体何なのか。

この家の中にも疑問がある。4つの部屋を除きそれ以外の部屋が異様に汚いのに食糧だけは完備されていること。まるで4人の人が泊まることを前々から知っていたかのような…。

そんな事をしているうちにキッチンに着いた。あの汚いが食材完備の謎の部屋に。

鍋を地面に置くと自分の部屋に歩き始めた。

「あぁ〜〜〜疲れた〜〜〜」

両手を上に伸ばして固まった体を上に伸ばし始めた。今日はいろんなことがありすぎた。部屋に戻ってからゆっくり考えよう。

そう考えた私は少し小走りで部屋に向かって行った。

部屋に着くと勢いよくドアを開けて部屋に入った。そしてベッドにダイブした。

御世辞にもふかふかとは言えないものだったが、それでも今日の疲れをいやすのには十分だった。

「ふぁ…なんだか眠く…」

そう言って睡魔に負けそうになったとたんそれを一掃するものがベッドを上って来て目の前に現れた。

カサカサと言う効果音がこの世で最も似合う”アレ”だ。

「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

私は叫んだ。I shouted!!いや発狂したのほうが近いかもしれない。

とにかくえらいことになった。

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

と叫んで天王が飛び込んできたとき、私はそこにあった枕をぶんぶん振り回していた。

「いや、あんたの方がうるさい!!!」

そう突っ込みを入れながらまだ振り回していた。

天王はこちらの行動から何が起こったか想像がついたようで、そんなことで叫んだのか…と呆れかえっていたようだ。

天王はそこにあった少し大きめの石を手に取り(これはあとで外に出そうと思ってたやつで、ご都合主義ではない)”アレ”に向かって投げつけた。

”アレ”は見事なまでに謎の液体を吹き出してつぶれた。

私はへなへなとその場に座り込んだ。天王が何か言ったようだったが安心して完全に受け流していた。

天王はそれに気付いたらしく顔をグイッと近づけてきた。「おい、聞いてんのか!!」そこで私の意識が現実に引き戻された。

急に顔を近づけられたからびっくりしてしまった。「え?!あ、うん」今気づいて適当に返事を返したことがバレバレだったが、「ならいいや」と返事を返してきた。

「じゃあ、もうやめろよ」

「へ?何を?」

「……………お前、やっぱり聞いてなかったろ」

「う…うん………」

天王は右手の人差し指と親指で眉間を揉んでからこう言った。

「だーかーら、もう俺の睡眠を邪魔すんのやめろよって言ったんだよ」

「わ、わかったよ…」

もうやめろよ、次やったらどうなっても知らんからなと念を押して立ち去って行った。私はちらりと”アレ”の死体に目を向けて考えた。そして名案が浮かんだ。

***************************************************************************

「と、いうわけでこっちで寝させてください。あんなゴキブリの死体がある部屋はいやなんです」

私は水岡にそう頼まれていた。一通り説明は受けたので別にいいよと返した。

「ほんと!!良かった〜!!」

ゴキブリがダメなのは私も一緒だが半狂乱になるなんて…そう思いつつベッドの端に寄った。

「ごめんね、ありがとう」

そう言いながらベッドに入ってきた。

後ろでもぞもぞと動いている気配を感じながら、私は物思いにふけることにした。

(一体どうしてこんなところに建物が建っているのだろう。この建物だけではない。高尾山に入ってからおかしいことが起こり続けていることは明確だ。

そろそろ夜になるというのに一向に私たちを探しに来る人の気配がない。どうしたのだろうか。

たしか道から外れて10分くらいで迷っていたはずだから、そこまで遠いところではないはずだ。途中で水岡が狂ってたけどそれでもそんなに遠くではないはずだ。

しかもこんな大きい建物があるのだから、夜になったらこの大きな家に向かって行ったと考えるのは普通だろう。

ん?ちょっと待てよ?この家はあの道からは見えていなかったはず…

こんなに大きな建物なら見落とすことはないはず…)

そこまで考えたが頭が痛くなり始めた。両側の眉間が締め付けられるように痛くなり、考えられなくなった。

考えるのをやめると自然と痛みが引いていった。こんなことははじめてだ。

「なんだったの?今の…」

声が出てしまった。水岡がこちらに反応した。

「え?何が何だって?」

「あ、いやなんでもないの水岡」

「……………」

何か不審に思ったのかこちらに顔を向けて目を細めてきた。

「ど、どうしたの?」

聞き返すと

「水岡って呼び方さ、なんかよそよそしいから名前で読んでくんない?」

特に関係ないことだったのでほっと安心し、今言われたことを考えた。

「いいけど、七海子っていうの略してナミでいい?」

「いいよ、じゃあ私はミズって呼ぶね」

「うん、わかった」

特に意味のないやり取りだったが、なんだか距離が近くなったような気がした。

このやり取りを終えるとナミはまた毛布をかぶりなおして眠り始めた。

私も同じように毛布をかぶりなおして寝ようとした。

その刹那―ゾクッと悪寒がし、すぐ目を開けた。そこには――――――――――――

<悪魔の手先 NO.4完>

=作者より=

いかがだったでしょうか。今回は3人が初めて高尾山に来てからの謎をきちんと考えたお話です。

出本の考えはまた次回。

ちなみに、最後のほうにあった名前のくだり。

本編に特に影響があるわけではありませんが、’もんと’や’みずおか’と打つより’ミズ’や’ナミ’と打つ方が楽だからという理由で急遽付け加えられたものだったりします。

まぁこれは蛇足だったかもしれませんね。

それでは、このような拙い小説に時間をかけてくださったあなたに感謝を。次回乞うご期待!!


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