悪魔の手先 NO.11 作:キョン
鉛筆……こんなものに恐怖したのはこれが初めてだっただろう。
不意に何も存在しなかった空間に突如として存在した鉛筆と言う存在には恐怖、そして唖然という言葉以外は意味を持たなかった。
「ここは居てはいけないところだ」――――――
天王の言葉が脳内に谺(こだま)する。そんなバカな…そう思わずには居られない状況だった。
『……………………』
無音の状況が続く。それを打ち破ったのは天王だった。
「……俺がこの異常な状況に気付いたのは、2回目に俺が料理を作りに行った時だ。あの時食器は見つかんなかったんだよ、正確に言うと棚を見るには見たんだがその時はなんとなく手を伸ばしただけで中には何も入っていなかったわけだ。
だがな、2回目に行った時はたまたま料理を作った後足がぶつかってそれが開いたんだよ。そうしたらな、そこには皿が入ってたんだよ。
おそらく皿を用意しとけって思ったからそうなったんだろうな。俺は食材も同様だと思う」
「……………………」
「とりあえずこのことはあいつらには明日話すつもりだ。ただし、この状況が異常だということを再認識させてからな。そうしないとなにをするかわからん」
これを伝えれば十分だろうといった顔つきでまた黙り込む。
「……そうだね…でも私には何で教えてくれたの?」
「お前はなんだかんだで有能だからな。発狂したり、この状況を喜んだりはしないだろう?」
「そう…………」
無音の状態が続き、今度は別のものが静寂を打ち破った。
「ドォォン」この音とともにまた窓から光が差し込む。
ビクンッと体を硬直させ、表情を驚かせたまま固めて、私は停止した。
「おっ、音と光にほとんど差が無かったな。相当近くに落ちたみたいだ」
その一言でさらに体をビクッと反応する。天王は「クックックックックックッ」と不気味に笑い、そのままこう聞いてきた。
「なに、昔から雷駄目なのか?」
少々、いや、かなりこっちを小馬鹿にするようなイントネーションで言ってきた。体を震わせながら答える。
「いや、昔は平気だったんだけどね、ちょっとあることがあってさ……」
「ほぉ、聞いてやろうじゃないか」
「いや、別に話す気はさらさらないんだけど……………」
「いーから言え。外に放り出すぞ」
「えぇ〜〜〜〜〜〜……………」
意外とSだということを再認識しつつ、仕方ないので話してやる。
「あれはちょっと、いや、結構前の話なんだけどね……」
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「ちょっと待ってよ」
私はそう言うと前を歩いていた男子は速度を落とす。
「ほら、速くしなよ」
そう言われてもこんなに疲れているのに速く歩けるわけもなく、さらに雨だというのにこんな山の中を歩くなんて想定外にもほどがあるぞ。
ここはとある山の中……私は里帰りしていて、たまたま里帰りの場所が異様に近かった大川という同級生と遊んでいたときのことだ。
そのとある山……というか家の裏にある通称「裏山」というひねりのかけらもないような名前の山で道に迷ってしまい、途方に暮れているというわけだ。
気温はぐんぐん下がり、体温も奪われていく。なんかいろいろ疲れたよ。おやすみ、パ○ラッシュ……
「寝るなー!寝たら死ぬぞー!つーかこれなんか聞いたことあるぞー!二重の意味で!」
はっと目を覚ますとそこには豪華な食事と、暖かい部屋があった。
「幻覚じゃねぇか!凄く危ない状況だよ、それは!」
あぁ、ひいおばあちゃんが見えるよ。なんか呼んでるな〜楽しそうだな〜アハハハ〜。
「行くなー!お前のひいばあちゃん亡くなってるから! ひいおばあちゃんも呼んじゃダメー!」
全ての幻想から立ち直ると、そこにはやはり暗い山道が広がっていた。
「……もう一回幻覚見よっかな」
「お前はバカなのか!?」
ギャーギャー騒いでくるので幻覚の夢はあきらめる。
それにしても、此処はどこなんだろう。結構な回数来てるから道は分かると思ったのに……。
それに何か道に生えてる木とかもおんなじに見えてきたぞ。いや、幻覚とかじゃなくて。
「なんか……怖い……」
「ん?抱きつくか?いいぞ来ても。ほらここに飛び………」
「燃えろ!私の小○宙ォォォォォォォォォォォォォ!」
「ウギャァァァァァァァァァァ!!!!!」
大川を弾き飛ばしたところで前を向く。しかし、一体どうなってんだ?普通に遊んで、さあ帰ろうってなった瞬間に道に迷うなんて。そう簡単に間違える道でもないはずなんだけどな?
ゴミのように転がっている大川をおいていき、前に進んでいく。服がぬれて体に張り付く。取り合えず良かった。薄いシャツで来なくて……。
そのあとも復活した大川と歩いたのだが一向に下は見えず、五里霧中だ。
「なんなんだよこれ!いい加減にしてくれよ!」
ついに大川の我慢が爆発した。
「ほんと、どうしたんだよこれ、何がどうなってるんだよ!一体何キロ歩いてんの?そして何時間歩いてんの?What使いまくりだよ!」
「確かに…これは異常だね…」
雨も先ほどよりもひどくなり、暗雲がさらに増えていった。時折光と音が来るから雷が多少あるのだろう。
雷か……。高い所に落ちやすいっていうけど、ほんとかな。
「雷って高い所に落ちるんだよな?確か正確には雷の通りやすい所らしいけど」
どうやら本当のようだ。いけない、この辺の木は比較的高いからさっさと下りないと。
「ほら、急ごう。いい加減危険だ」
大川もそう思ったらしく、速歩きがさらに速くなる。私は小走りでそれを追いかけた。
その後、雷はどんどん近づいてきて相当近くなったところで私たちは驚愕の光景を目にする。
「…………ここは………………?」
そこは一見広場のようになっていて、中心に大きな木があり、その周りには様々な花が咲き乱れていた。そしてそこをまるで他と分けるためにあるかのように木が囲っていた。
ちょっと待って、こんな場所は此処にはなかったはずだ。
「うぉっ、すっげ!」
大川は気づいていないようだが私は気づいていた。此処にはこんな場所が存在しないというものとは別のものに。
それはここには雷の通り道となる大木が中心にあり、さらには周りをも囲っているのだ。現実の状況で考えたらとても危険な状況だ。
そして、もうひとつ。雨が入ってきていなかった。明らかな…明らか過ぎるほどの異常だ。
「ちょっと、ここどう考えてもおかしいって」
そう言おうとしたとき私の隣の隣のそのまた隣位の木が光った。いや、正しくは光るものが落ちたのだ。
「……………………は?」
そう、ついに落雷という現場を目撃したのだ。かなり離れているというのに髪の毛が逆立つ。
「ちょ、ちょっと!速く逃げないと!」
そう言おうとしても口が動かない。あの恐怖が体にしみ込んだからだろう。
その直後、大川が走ってきて私の手を取った。そのまま駈け出し、私は始めは足が動かず引きずられるような形で動き出した。
「ヤバいヤバい!これは洒落にならねぇぞ!」
さすがに本気で焦っているようだった。顔からはふざけが完全に抜けている。
私は足を動かすものの、頭の中の自分の意識は皆無だった。ただたださっきの雷の映像がフラッシュバックし続けているのだ。
わけもわからず走り続け、肺も足も身体全体が24時間フル活動以上の働きをみせたようで、気が付いたら山を下りていた。
私たちはすぐに家に駆け込み、親にこってり叱られたあと、夕食を食べて就寝した………
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「と、言う理由でまぁ雷が苦手になったんだよ」
「ほぉ…」
俺は少々考えた。これは以前に同じような状況を聞いたことがあるような気がする。
何だ、そして大川という名前にも心当たりが……………。
「……………………………!!!!!!」
俺は今思い出した。周りの状況から隔離された空間、雨の日、そして大川―――――――
そうかこれは――――――
「どうした、天王?」
心配そうにしている門戸の声で現実に引き戻される。
「あ、あぁ……ちょっとな」
門戸は少し目を細め、
「もしかしてこれの真相に心当たりでもできたの?」
う…何だこいつ鋭いな。
「……あぁ」
「ふぅん、ちなみに何?教えてよ」
俺はいったん考えてからこう切り出した。
「これの犯人はもしかしたら――――――――」
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この後、俺はこれの俺なりの推理を告げ、門戸はそれを聞いて多少動揺しようだ。
俺らはこの後明日の打ち合わせを多少交わし、明日のために寝ることにした。
俺はベッドに戻ると水岡が寝ているのではなく、何故か気絶していることに気付き起こしてやった。
1回「うわぁぁぁ!!」と叫びそうになったのを口を押さえて封じ、「いいから、もう寝ろ」と促した。起こしたのは俺だがな。
水岡はなぜか顔を赤くし、とても動揺しているかのような雰囲気で布団にもぐった。まぁ無視だ、無視。
ともあれ、これで仮説が立った。もしかしたら明日此処から抜け出せるかも知れない。
<悪魔の手先 NO.11完>
=作者より=
やっとです。ここまで来るのにどれだけの時間を費やしたことか…。
今回の話のオチはここまで読んでくださった方にはわかると思います。と言うか丸わかりです。
途中のパ○ラッシュのボケは生徒会の○存シリーズの番外編生徒会の○種に載っています。
このシリーズは本当に面白いです。俺がラノベの中でもっとも好きな涼宮○ルヒの憂鬱の次位面白いです。
ちなみに3位は○ュラララ!!で、4位は○issingです。どうでもよかったですね。
そんなこんなで、もう少しこのお話にお付き合いしていただけると幸いです。
それでは、このような拙い小説に時間をかけてくださったあなたに感謝を。次回乞うご期待!!
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