悪魔の手先 NO.14  作:キョン

暗い。。。暗い。。。ここはどこだ?

ほこり臭い…血のにおい…。。。

あぁ思い出した。此処は俺が親父を殺した場所じゃないか。

よく見りゃ親父もいるじゃないか。

でも、親父の前に立っているのは俺じゃないな。誰だ?

「………………」

あれ、俺もいるじゃないか。布団にくるまれて、その立っている奴の後ろに転がっているじゃないか。

誰だ?あいつは誰だ?

そいつは後ろを振り返り、布団にくるまれた『俺』にこう言った。

「さぁ、これでお前は晴れて自由の身だ、弟よ――――――――」

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一方…

「どうなってんのこれ?出本たちは起きないし、天王は倒れるしで…」

「まぁ、無理もないだろうな。こんなの理解できるわけないんだから」

「つーかあんた誰?気になってたんだけど」

「初対面で失礼な奴だな。これでも有名なんだぞ、テニス界では」

「はぁ、誰よ」

「大川 比呂紀(おおかわ ひろき)…って言って分かるか」

「………え?あんたほんとに大川なの?」

「嘘の必要性はないだろう?」

「……ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」

「うるさっ」

「あんたってアレでしょ、天才児童と謳われたのにもかかわらず、なぜか5年の途中でテニスとは縁を切り、メディアだけでなく世間からも接触を絶ったっていうあの!」

「そうだよ、意外だろう?」

「サインくださいン!」

「くだらな!」

そんなやりとりを交わしていた。

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「自由?」

実父を殺した直後とは思えない、完全なる無表情で答える。

「そうだ、お前はもう自由で自由な生活を送ることができるんだ」

「自由……」

キィ………

車が停車する音がした。

「あ…母だな。ちょっと待ってろ」

兄貴はそう言うと家へ歩いて行った。

自由………自由って何だ?何をすればいいんだ?

親父はすでに完全に絶命している。心臓の鼓動はないのに血だまりは広がる。

自由…俺のやりたいこと…。

そして俺は兄貴の所へと向かった。手にはとがった木の棒を掴んで……。


着いた時には兄貴は殺していた。母も。

俺はこの時の感情は覚えていない。複雑だったか、単純だったか、もしかしたら何も考えていなかったのかもしれない。

ただただ、復讐の2文字が浮かんでいた。

父の虐待は愛情表現だったのだ。

虐待は行きすぎた愛情だ。

喜びも悲しみも楽しさもつまらなさも、そして自由と束縛も、快楽も苦痛も、生も死も――――――――。

全てを支配するための手段なのだ。曲りなりにも虐待は愛情だったのだ。

愛情表現を奪った兄貴を、何もしていない母を殺した兄貴を、殺すことだけを考えていた。

自由になり、俺は兄貴へ復讐を誓った。

この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で、この手で。

殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す。

しかし、兄貴は殺していた。父も、母も、そして――――自分さえも。

兄貴はなぜこんなことをしたのか。

おそらくこれも愛情表現だったのだろう。

愛情と言う名目で虐待をする父、一見無関係に見えるが、知らないという体での育児放棄をした母、そして、曲がりなりにも向けられた、そのゆがんだ愛を断ち切った兄貴―――。

兄貴は俺への愛情表現のため、俺に悪影響を及ぼす奴を抹殺したのだ。

父も、母も、そして自分も。

それが真実。それが―――真実――――。

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「お前はこの後、俺への怒りをぶつけることなく終わった。だからお前はぶつける必要が無いように記憶を改ざんした。

つまり、自分が殺した。という嘘に改ざんしたのだ」

「………………………………」

そんな馬鹿な…俺は今は父の虐待も、母の育児放棄も、完全におかしいと思っているぞ。いや、当時からおかしいと思っていた。

これは記憶を改ざんしたからなのか?

「いや、それはおいおい分かっていた結果だろう。いずれ自我も芽生え、世間をもっと知ってくる。途中で気付いただろう」

「待て、俺の記憶では最初からおかしいと思っているんだが、これは改ざんの結果なのか?」

「そうだ。改ざん前は愛情と感じていたわけだからな。異常な状況を隠滅し、普通の思想に改ざんした結果だ」

「………………………………」

冗談きつすぎるぞ、こんな事実だったとは……。

しかし、俺は実際に法廷まで行って罰せられている。名前も変わったしな。

これについてはどう説明するんだ?ここの記憶まで改ざんされたのか。

「そうだ」

「………!!」

「お前は罰せられたと勘違いしているようだな。お前は罰せられてなどいない。事実、お前の犯罪記録はどこにも残っていない。

名前は、単純にお前が前の名前を決めているだけだ。何の関係性もない。

つまり、お前は何も一切変わっていないんだよ」

「………………………………」

嘘……だろ……そんな……わけが無い。

「嘘ではない。お前の記憶が虚像だ」

「………………………………」

「そろそろ、戻るぞ。理解したなお前の真の記憶のことを」

「………………………………」

「…戻るぞ」

俺はこの時理解した。俺の真の記憶についてを――――

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「う……ん」

「あっ、起きた!」

俺が目を開けると左側から俺のことをのぞきこんでいる水岡の顔が入ってきた。

「もう!何で急に倒れたのよ!」

んなこと言われても……。

「あ、あとさ……早くどいてくれると助かるんだけど……」

「はぁ?どういう意味だ?」

水岡は顔を赤らめて、

「その……足が……それに……恥ずかしいというか………」

俺はまだ回らない頭を上げて周囲を見渡す。

水岡を見ると……なぜか足のしびれる正座をしていた。

ん……待てよ…。

「……お前」

「ち、違うのっ!そういうのじゃなくて大川さんが『ちょっと見てろ、膝枕で。これは命令だ』って言うからねっ!仕方なくねっ!

だってあの大川さんには逆らえないしねっ!だ、だから本当に仕方なく!本当に仕方なくなんだよっ!」

俺は大川を睨む。テメェ……

大川は口笛を吹いていた。そんなのでごまかせるわけないだろうが……。

というか、

「……大川”さん”?」

「だ、だってあの人大川比呂紀って言う超天才テニスプレイヤーでねっ!さすがにそんな人の言うことには逆らえないからねっ!だから…」

「もういい、分かった」

大川……貴様………

「そんなことはいい。弟よ。いい加減記憶を俺にくれないか?」

ここで兄貴が声をかけてくる。

「…………あぁ、分かったよ。ただし条件がある」

「なんだ?」

「悪魔ってのは死んだ人間なんだろ?じゃあおそらく消える方法もあるはずだ。

全ての悪魔がまだ現存しているなら数も尋常じゃないことになっているはずだからな」

「……何が言いたい」

「俺の記憶を喰ったら……消えろ」

「…………」

「俺はなんだかんだであんたのことは信頼していたんだ。だがあんなことをしたなら話しは別だ。自分の両親を殺した人間を信頼なんてできるわけないだろう?

だから……消えろ」

「……了解した。消えることを約束しよう」

俺は「それなら、喰え」と言った。

「……それでは」

兄貴は口をあけると、耳の近くまで口が裂け鋭い歯が付いた口が見えた。

やはり、なんだかんだ言っても悪魔は悪魔だな。

「…………化け物め、消えろ」

俺は吐き捨て、気が遠くなっていくのを感じた。

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次回、完結。

<悪魔の手先 NO.14完>

=作者より=

ついに終わりです。次回が。

どうしましょ、凄く分かりにくくなっている気がする……。

次回簡単にまとめますのでよろしくお願いします。

と言うわけで次回は「悪魔の手先 全ての終わり、完結編(仮)」です。

それでは、このような拙い作品に時間を費やしてくださった方に感謝を。次回完結編までお付き合いいただけると幸いです。


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