悪魔の手先 NO.15 全ての終わり、完結編 作:キョン
「だから、こういうことだ」
俺は図を紙に書き始めた。
『俺の父親が兄貴に殺される。
↓
俺の母親が兄貴に殺される。
↓
兄貴は自殺
↓
両親を殺された怒りをぶつけられない俺
↓
ならぶつけなくていいようにしちゃえ
↓
記憶を改ざん』
「こういうことだ」
俺はこれを描いたペンを回しながら門戸、出本、そして水岡にそれを見せた。
「なるほどね、つまり、あなたは現実逃避をするために記憶を改ざんして、その改ざんを矯正するためにあなたのお兄さん――悪魔が来た
ってわけね」
門戸がやはり一番最初に理解した。
ちなみに悪魔云々の所は口頭で説明した。
まぁ一種の物語みたいなものだから、そんな感じで全員理解できたらしい。俺は門戸に言葉を返す。
「そうだ、理解力のいい奴は好きだぞ、俺は」
「馬鹿じゃないの?」
「冗談だ」
そのあとに「そんなのがあるわけないだろ?」と付け足しておく。これは保険みたいなもんだ。
「そうね」
門戸はたいして気にした様子もなく。出本と水岡に説明を始める。さすが文系。国語は俺より高いだけある。
俺はそれを見ているだけでは暇なので、俺はあの時のことを思い出し始めた――。
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あの後、記憶を喰われた俺はまた倒れたという。
さっきの膝枕のくだりがもう一度有ったことも付け加えておこう。
そして、そこには大川の姿はなく、何でも消えた悪魔を復活させる方法を探すんだそうだ。あいつ、契約破棄していったらしい。
門戸と出本もまだ寝ていて。取り合えずあの館の中にもう一度戻ることにした。
その後、意識が戻るまでの間水岡に説明していたのだが、よく伝わらなかったらしい。
意識が戻ると、此処からはさっさと出ようという意見で説明もまだのまま此処から脱出した。
驚いたことに、俺たちが体験したあの日の記録は無くなっていて、時間が戻っていたのだ。俺たちが道からそれたあの時間までな。
あの隔離空間は他と時間を断絶できるようだ。何だこのいまさら感のありまくりな情報?
周りには人はおらず、何が何だかわからぬまま高尾山を登り切り、旅館でうんたらかんたらあったり、そのほかにもいろいろあって(はし
ょりすぎとか言うなよ)修学旅行が終了した。
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その後、慰労休があり、再び学校に登校した今それの説明をしているってわけだ。
しかし、見ていなかった出本はまだしも、ほぼ一部始終を見ていた水岡が理解できないのは多少問題があるのではないか。確かこいつ特別
枠だったよな?って、知ってる人いないか。
「うん、なるほど、ほほぉ」
おい、出本よ、お前分かってないだろ?
「へぇ、なる〜」
「ねぇ、ミズ、あなた分かってないでしょ?」
「そ、そんなことは…」
「……仕方ない、もう一度説明するよ」
また説明が始まった。
またまた、俺は回想の中に入っていく。
あの後、なんと、出本と門戸は付き合うことになったそうだ。
元々相思相愛だったそうだが今回の事でお互いの気持ちに決心がついたらしく、お互いが同時に告白に踏み切ったそうだ。偶然って凄い。
俺か?俺に何か有るわけないだろうが。
しかも俺の理論から言うと中学生の時点で恋とか何とかというものをするということの必要性のなさと、愛という感情の曖昧さとかそう言
う話になってしまうのでここでは割愛させていただく。
{ナレーさん}水岡は?{ナレー終}
「は?水岡?それがどうした?あぁ、あいつはテニスを頑張るとかそういうことを言っていた気がするな。大川のことは多少なりとも影響
したようだ、あいつも少しは良いこともしていくな」
{ナレーさん}お前あいつの恋心って知ってる?{ナレー終}
「は?あいつの恋心?んなもん知ってるわきゃないだろ、何なんだホントに?」
ナレーさんは「お前って鈍感だね、異常なほどに。いや、まぁ作者の思想の自己投影だから仕方ないか……」とわけのわからないことを発
して消えていった。
あぁ、そうそう俺のことも言っておくべきだな。
俺今、なんだかんだでクラスメイトと馴染んできている。やはり、あの修学旅行は俺にいい結果をもたらしてくれたようだ。ありがたい…
…いや、ありがたく無いかも。
クラスメイトは以前の俺からは想像できないほどキャラがほぼ180度変わっていることに驚いているようだ。無理もない。
それでもこのクラスはそんなことは気にしないようで、随分と早く馴染めた。
言い方を良くすれば心が広い、悪い言い方をすれば単純、だ。
今後は俺もこのクラスに馴染んでいけることだろう。
「……と言うわけ。分かった?」
ようやく説明し終わったようだ。長かった。
「あぁ、なるほど。はぁやっと理解できたよ」
「凄く複雑な状況にあったのね、天王も」
「いや、俺はそう勘違いしていただけだ。結果は単純明快、狂った兄が狂った両親を殺した……ただそれだけのことさ」
いや、俺も狂っているのかもな。
「いや〜それでも貴重な体験したよな〜」
出本が緊張感と言う言葉を教えたいほど気の抜けた声でこう言ってきたため、「緊張感を持て」と注意しておいた。
出本の言葉に反応したのは門戸だった。
「私はもうあんな体験はやだな〜、2度と体験したくないよ。あっ、でも一哉が守ってくれるんならいいかも!」
「安心しろ!俺は命をかけてでもお前を守る!」
「命はかけちゃダメッ!そうしたらもう会えなくなっちゃう〜!」
……見てるこっちが恥ずかしくなるくらいのイチャつきぶりだ。イラッとする。
「……な、なんかイライラしてるね。そんなにイチャイチャしたいなら、私と………」
「拒否する。断固として拒否する」
「早いね、言いきってないよ?そんなに嫌?」
「いやです。止めてください」
「敬語にするくらい嫌なの?ねぇそんなに嫌なの?」
「お前だって嫌だろ?別に無理しなくていいよ。俺だってイチャつきたいんじゃなくて、単純にこう言うのが嫌いなだけだから。なんなら
その理由を話してやろうか?」
俺は右の手の平を水岡に向けてニヤリとあくどい笑いを、意図的に浮かべた。
「私は別に嫌じゃないけど……むしろそのほうが……」
「あぁ?後半聞こえなかったんだが」
「な、なんでもない!」
「??」
本当にこいつは何なのだろう。最近俺と話していると挙動不審になったり、急に黙りこんだり、顔赤くしたり、風邪か?風邪なのか?
{ナレーさん}そこまで分かっているのに、何でわかんないの、お前?{ナレー終}
「は、だから何が?」
ナレーさんは「もういいよ…」と言ってまた消えていった。本当に何なんだこいつは?
と、そこで教師が「ちょっと天王の班、誰か来てくれ。修学旅行の資料整理をしたいからな」と俺らの班を呼びに来た。
水岡が「あ、はい」と委員長としてのリーダーシップを発揮するかのように、真っ先に立ち上がった。
俺はそれを左手で制止する。そして立ち上がった。
「へぇ、あんたがこんなことするなんてね」
水岡も門戸も出本も関心していた。俺はそれにこう言い返す。
「当り前だろう?だって俺は」
一瞬のためののちこう続けた。
「だって俺は、この班の班長だからな」
そこには、作り笑顔ではない心の底からの笑顔をした俺がいた。
<悪魔の手先 全ての終わり、完結編完>
=作者より=
ついに終わった…………。長かった…………。
当初と細部の設定が異なったり、使わなかったネタもたくさんあったのですが、とりあえずこれで終了です。
しかし、ここまで広げてすぐに仕舞うってのもなんですので、番外編をちょこっとやるかも知れません。気分次第です。
次のアイディアが浮かんだらそれを書きますし、浮かばなかったら番外編をやると思います。もしかしたら同時並行でやる可能性もありま
すね。
ちなみにここまで付き合ってくださった方へ、番外編の構想を今少しだけ考えているのですが、先取り情報として少し発表したいと思いま
す。
番外編案其の1、「テニスの王女様」 水岡がとある理由から天王とテニス対決をすることに!しかも勝った方は相手に好きなことを一つ
してもらえるという条件付きになってしまった!
果たして水岡は勝つことができるのだろうか!? というお話。
番外編案其の2、「Love and love day...」 門戸と出本のデート場面にたまたま偶然にも通りかかった天王と水岡が尾行するお話。
門戸と出本は何かをするのか!?そして、それをさりげなく尾行している天王と水岡もデートをしているのではな
いのか!?
様々な想いと現実が交錯するなか、何かが起こるかも……!?
番外編案其の3、「とある出本の勉強会」 中間試験が迫り、追いつめられた出本に他の人が勉強を教えるお話。
ギャグ中心で、出本の馬鹿さ加減が輝くであろうお話。
などなど、いろいろ考えてはいるのですが、あんまり書くと長くなりすぎてしまうのでこの辺で。というこれだけ案出てるなら番外編やっ
ちゃった方が良くね?
というわけでただいま決定しました。番外編はやります。
どれをやるかは分かりませんが、とにかくやることに決めました。
題名は「悪魔の手先 番外編”番外編の題名”」と、こんな感じに表記しますので、ここまで付き合ってくださった方、見ていただけると
幸いです。
そろそろお時間のようです。それでは、このような拙い小説に時間をかけてくださったあなたに感謝を。次回作もご期待下さい!!
コメント
3点 413 2010/07/03 12:30
ついに完結しましたね
全部見ましたがとても面白かったです
番外編が楽しみです♪
名も無き詩人 2010/07/04 08:34
とてもおもしろかったです。 番外編も楽しみです(^O^)/