悪魔の手先　番外編”水岡家の食卓　@1” 　作：キョン

悪魔の手先　番外編”水岡家の食卓in姉妹　@1”

これはとある家の食事風景。何の変哲もない、至って普通な光景である。

現在両親は旅行に出ているため、そのとある家族の姉妹だけが残っていた。

そこで、ある話題が出た。

「そう言えば、あなたって恋とか興味あんの？」

「ブッフッ！！」

あなたと姉に呼ばれた水岡七海子はこの話題を聞いた途端に咀嚼していたものを顔を横に回転させて吹き出す。

姉の七海子は妹の水岡　天空（みずおか　そら）に顔を赤らめながら聞き返す。

「なななななななななな何を言いだすの！？」

「いや、最近元気ないからさ。窓の方向いてボーッとしたり、急に溜息ついたり、優柔不断と言うかなんと言うかそんな感じがしたからさ」

天空は生物学上「女」に分類されるはずだが、一般的思考から考えると若干、いやかなり男っぽい。

口調も、高校2年生の思春期まっさかりのはずなのに自分の服装に一切と言うほど興味が無いことも、男っぽいというより女っぽくないのだ。

髪の毛と顔立ちは女性らしさが出ているが、妹は一般的な女性としての外見の変化を普通程度にしているが、天空は一切していない。気にしてはいるそうだ。

しかし、このかわいそうなほどのぺた………コホン、成長途中にある姉は頭脳は良い。

いや、頭脳と言うより知能指数が高いと言った方が適しているだろう。要するに、普通の頭の良さとは多少意味合いが異なる。

空間把握能力が高い、速読術もなぜか凄い、暗記力も半端ではない。さらには読心術までできてしまう。

そう言った直接的には勉学に関係性の無い能力が高いのだ。一回計測したときにはIQ150と言われたこともある。証明証まで発行された。

よってこの彼女に隠し事はできない。読心術は疲れるのであまり使用しないらしいが、必要な時には迷わず使う。それがこの姉のポリシーである。

その必要な時の最優先項目とは「妹をいじめやすそうな時」である。よって、

「むむっ、やはり気になっている異性がいるじゃないか！！」

「ちょっ、止めてよ！読心術！」

「フッフッフッ、私があなたのいやがる姿を見るのが好きだということを知った上で発言してもらおうか！」

「威張るんじゃない！」

姉は異様な執念を燃やしながらどんどん心を読んでいく。

「おっ、結構身近にいるらしいな！相手の反応は………あらら、この人恋とかしない主義の人だろ？無理だね、無理無理無理」

「う、うるさい！！いいの！！」

顔の赤らみがどんどん加速し、今やゆでダコ状態だ。現実ではありえない光景だ。

「なにぃ！ベッドを共にしているだとぉ！！貴様！どこまでヤッたでおじゃるか！！」

「何でそんな口調なの！？しかも、『ヤッた』とか言わない！卑猥だから！」

「…………マセガキ」

「うっさい！！！」

姉はため息交じりにこう言う。

「仕方ない、顔とかはよく見れなかったけど名前は分かったよ、天王……って言うんだ」

図星。やはり、本当に心の中を覗いているようだ。

「……………そうだけど…………」

「アッハッハッハッ！何そんなにひよってるんだよ！」

「だ、だって……」

姉は腹を抱えて背もたれに寄り掛かりながら大笑いをする。

ようやく笑い終わったかと思うと、人差し指をあごに当てて少し考えてから一言。

「よし、明後日その子を家に呼びな」

しばし沈黙。

その後絶叫。

「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ！！！！！！！！！」

「明日誘って、明後日連れてきな。ちょうど土曜だし、親はしばらく居ないしさ」

「で、でも」

顔を更に赤らめて続ける。

「そんな事、向こうが了承してくれるかどうか……それに、連れてきて何するの？」

姉はそんじょそこらの俳優ではできない、心の底からの悪意でできた、気味の悪い笑顔を浮かべて一言。

「私が釣るんだよ」

「えええっ！！！！！！！」

意外すぎる返答。

どうせ「あんたの気持ちを私が目の前で打ちあけてやる！」とか「完膚なきまでにコテンパンにしてそのあと『私の妹に近づくな』って言ってやる！」とか言うのかと思った。後者はただの逆恨みだけど。

まぁ、釣るだけならいいや。釣るだけなら。ん？釣る？

「えっ？えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ！！！！！！！！！」

今日2度目の絶叫。

「な、なんで？」

「そんなの決まってるだろ？早くしないと私が奪っちゃうよってことだよ」

「何よそれ！向こうは姉さんのこと知らないんだよ！？」

姉は「ふふん」と鼻で笑い、

「私の魅力ならいちころだからな。いちころ、いちころ」

「無駄な自信！」

しかし、実際問題、姉はその自信に見合っただけの外見をしている。

体型の問題は置いておくとして、顔立ちは美女と言うに値するもので、ボーイッシュ（行きすぎ感多少あり）も外見の良さを引き立てている。

姉自身いわく、「現在進行形でモテている」らしい。まぁ、想像がつかないと言えば嘘になるが。

しかし、私は反論する。

「で、でも、そんなことしてメリットないじゃない！姉さんには！」

そう、姉にはそんな事をする必要性もメリットもない。なぜそんな事をするのだろう？

「う〜ん、理由は二つね。まずこれをさっき読心術で見たときに発展がしなさそうだったらね、私に奪われる前に奪っちゃえってことね。一言でいえば告白の強制」

「最悪の考えね」

最悪の考えだ。

「で、もう一つはね……………」

溜めて溜めて溜めてからの、一言。

「私に彼を取られて、初恋が一瞬で失敗して落胆するあなたを見たいからよ」

「鬼ぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい！！！！！！！！！！！！！」

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次の日…………

詳しい説明は割愛するが、大まかに説明すると、

「て、てててててて天王？明日暇？」

「あぁ？何だその喋り方は？病院に行け病院に」

「質問に答えて！明日暇なの！？」

「お、おいおいどうしたよ？まぁいいや。

明日か………これと言ったことはないな」

「ホ、ホント？じゃ、じゃあ明日家に来ない？」

「は？何でだ？」

「………いいから来いって言ってんだよ………」

「………………はい」

とまぁこんな感じで誘ったのだ。脅迫ではない。断じてない。

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さらに翌日の土曜日………

向こうは家を知らなかったので私は天王の家に迎えに行くことになっていた。

今はその約束の時間で、天王の家の扉の前にいるのだが、

「…………………」

硬直していた。実際何回か来たことはある（昔脱引き込もりをさせていた時。詳しくは1話参照）が、こういう感情の状態で来たことは無かったな。当り前だけど。

「……………よし」

覚悟を決めて扉を開けようとした時、唐突にそれが開き、

「あがっ！」

顔をおもいきりぶつけた。

「おいおい、そんな所に突っ立ってんなよ」

詫びれた様子もなく、いや、確かにこっちが悪いのだけれど。そこには私服姿の天王がいた。

私服ははやりとかそういう感じのものではなかったけれど、可もなく不可もなくと言った感じだった。

それでも、そういう感情を抱いている相手の私服は嫌でも過剰に反応してしまうもの（作者の知り合いで女大好きな作者と正反対の思想の持ち主談）で、

少女まんがでありがちなきらきらふわふわした、あの背景効果が浮かび上がってきそうだった。

私がそれのがん見しながら鼻を押さえてへたり込んでいると、天王が手を差し伸べてきて、

「ほら、立てよ。汚いぞ？そんなところに座ってたら」

と言ってきた。

私は不意を突かれたその発言に一瞬危うくなりながらも、手をと……………

「……！！！！！！！！」

その瞬間に私は気づいた。私は今天王の手を握っている。

「ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい」

「急にどうした！？どこか痛むのか」

「違う違う違う違う違う違う」

「どうしたんだ本当に！？熱でもあんのか！？」

「う、うん大丈夫……」

私は天王のてが離れると冷静を取り戻し、鼓動が速まった心臓を抑えつけながら歩き出した。

歩いている間はさっきのことからか、終始無言だった。

私の家の前につくと、天王は「意外と凄い家だな」と言っていた。

「まあね」と相槌をうち、家の扉を開ける。

すると、そこには下着姿の姉がいた。

私は瞬間的に「おじゃまします」と言おうとしていたであろう天王を回れ右させ、扉から追い出す。

一瞬で鍵を厳重に閉めて姉に背を向けたままジャンプ！

一回転しながら姉の背後まで跳躍し、空中に浮いた状態で姉が振り向く前に後頭部に蹴りを叩きこむ。

蹴りを入れた後一旦着地し更に跳躍、前にうつぶせの状態になるまで叩きつけられた姉の頭にひざを落とす。

名付けて、『水岡流・跳躍からの膝落とし』である！そこ、ネーミングセンスないとか言わない！

姉は「かはっ…ふっ負けたぜ」と言い残し気絶。実際問題現実でこれをやったらどれほどの威力なのか分からないが、気絶した姉を近くの父と母の部屋に叩き込んで、外から鍵をかけた。

天王は静かになったのを見計らったのか扉を開けて、「さっきの人って誰？」と聞いてきた。

「……姉さん」

そう答えると天王は、「あぁ、どおりで」と納得していた。これはどう反応すればいいの？

そして、この「天王、姉妹争奪戦」は幕を開けた……。そこ！ネーミングセンスないとか言わない！そして番外編一発目で前後編ってどうよ？とかも言わない！

<悪魔の手先　番外編”水岡家の食卓in姉妹　@1”完>

＝作者より＝

番外編一発目です。連載物ですけど。

いやね、想像ではもっと短いかなぁと思ったらあら不思議、意外と長い！で、仕方なく連載物にしました。すいません………。

今回のお話は番外編で新キャラ登場！？しかも本編終わってんのに！？みたいな突っ込みありまくりでしょう。

ええ、確かにそうです。しかし！俺は重大な事に気づいてしまったのです！

「この番外編でもうしばらく続けたら面白いことになんじゃね？」

そぉぉぉぉぉぉぉです！！別に終わらせる必要性なかったんです！！

しばらくこれを続けていけばもっと深い所に入っていける可能性があるし、割合話の本筋が決まってるから新作のアイディアを考える時間稼ぎにもなる！！

最高！そして最強な考え！　まさに神となる私にふさわしい！崇めよ〜、我を崇めよ〜！

……………冗談はさておき、つまりそういうことです。

しばらくこれを続ければ現在考えている次回作をもっと固めることができますので、もうしばらくこの鈍感男と一筋女、そして今回100%出番のないバカップル共とお付き合いしていただくと幸いです。

それでは、このような拙い小説に時間をかけてくださったあなたに感謝を。次回@2、一体あの後姉はどうなってしまうのか！乞うご期待！！