悪魔の手先 番外編”水岡家の食卓 @4” 作:キョン
悪魔の手先 番外編”水岡家の食卓in姉妹 @4完結編”
私は次に目覚めたのは深夜12時くらいだった。のどが渇いたので下の階に下りると、天王と姉がテーブルの向かいに座って話していた。
「ん?どうしたのかな?」
2人の様子がおかしいので少し見ていると、
「しかし、お前の焦った姿を見れるとはね」
「しつこいな」
焦った姿?
私は階段を下りて目の前にあるキッチンに隠れた。
「しかし、私がトイレに入っているのにドアをドンドン叩いてあわてる様と言ったら………」
「しつこいな、本当に……しかもあれ、焦ってないから。別に声だって張り上げてなかったし」
え?なんの話し?
「『おい!水岡が滑って倒れて頭うって意識ないんだ!裸だし、どうにかしてくれよ!!』だっけ?凄いねぇ〜愛だねぇ〜」
「そんな言い方じゃないっつーの、もっとゆっくりしたトーンだよ」
………なんだ、一応そういうことだったんだ。あれはキャラが崩れるのが嫌だったのかな?
「まぁ、別にいいけどさ、そういう風にしといてやるよ」
「あんた、ホントにいい性格してるな。ゴシップ好きというか…………」
「お前に言われたかないけどね。それにしてもあんたって、意外といい人間よね。
さっき私が刺身食った時も下痢止めとか用意されてたし、『馬鹿だね』と言っている割には心の中で心配していたりして」
「っ!何で心読めてんだよ!」
「読心術」
「超能力者ですか!?」
事実だからしょうがないが。
「まぁ、そうとも言えるわね。正確には相手の一挙一動を見てその人のだいたいの感情を読み取るだけだけど」
「それでも凄いわ」
「まぁ、それはいいとして。じゃ本題の私があなたをこの家に呼んだ理由を説明するわよ」
…………なんか違和感を感じる。何だろう?
「私はね、本当はとあるあなたのことを好きな人に、告白をさっさとしてもらうためにこんなことをしたんだけどさ」
「面倒な奴だな。あぁ、詳しい理由は言わなくていい。その辺は興味ないからな」
「あ、そう。ならいいわ。 で、じゃああんたに会ってみようってことで呼んだわけ。あぁ、そう言えば一番最初のあの下着姿もその作戦
の一つだからね。そういう性癖とかではないから。
そしたらさ、あんた意外とカッコいいしさ、話してみると面白いし、心読めば優しいしでさ、あぁ、意外といい人なんだな〜って思ったわ
けよ」
………………ちょっと待って。雰囲気があやしいぞ。
「でね、私って昔から結構モテるんだけどさ、それって私と話したことのない、ただ私の外見の話なのよ。
昔……って言っても中3のころなんだけどさ、一回だけ告白したことがあるのね。
そうしたら『男女に興味はない。必要以上に近づいてくるな』…だってさ。
その時さあぁ、私って自分の中身を知られた人には近づけないんだって思っちゃったのよ。
実際、見たことも話したことも無い人からはよく告白されるのに、知り合いからは一切されないのよ。
それどころか避けられてるみたいにも感じるのね。もしかしたらこっちが勝手にそう思ってるだけかもしれないけどさ。
それでもずっとそんな風に感じたらさ、やっぱり知り合いとかは避けちゃってさ、きちんと話もしたことないんだ。
でも、あなたは私の外見には興味ないし、無理やり呼ばれたのに心の底ではきちんとした対応取ってるしさ。
私の性格とかも知った上でそういう行動に出て来てくれるし、本当にいい人なんだな〜って思ったんだ」
…………もしかして…………
「それがどうした?俺の質問には関係ないな。さっさと質問に答えてくれよ。さっきから何なんだ、全く」
そう言って天王は目をつぶり、肩をすくめて「やれやれ」というポーズをした。
と、そこで私の姉は信じられない行動に出た。姉は椅子の家に膝立ちし、目をつぶっていて前を見れない天王に顔を近づけると、
天王の唇に自分の唇を重ねた。
姉は唇を離し、顔を赤らめてにっこりとしながら一言。
「私はお前……いや、睦君を好きになったんだと思う」
天王は目を見開いて一言。
「……………………は?」
………………………………
「私と付き合ってくれない? 本気の本気でさ。 じゃ、今日は遅いから答えは明日聞かせてね!」
椅子から立ち上がって階段を上っていく。
………………………………
沈黙。その後絶叫。
『嘘ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!』
私と天王は同時にシャウトした。
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次の日………
天王は私の作った朝食を食べながらこう言った。
「あのな、俺だったからいいものの、他の人だったらどうなっていたか分からねぇぞ?」
「えへへ、優しいんだね」
「っ!そこ、そういう解釈をしない!!」
「そうだよ姉さん!なんでいきなりキッ、キスなんかするのさ!」
「私が睦君を好きだからですが、何か?」
『………………』
こんなにはっきり言われてしまうと反論しづらい。
姉さんもなぜか女口調になってるし、天王も参っているようだし、どうしよう。
「でさ、まだ私答え聞いてないんだけど、どうなの?」
「…………どうと言われても……」
「私さ、最初はちょっと動機が不純だったんだけどさ、これは本当なんだよ!本当に好きなんだっていうのが分かるの!」
「………………」
「だから……………さ。確かに1日しかたっていない私を好きになってくれってものちょっと難しい気はするんだよ。確かに。
でも………さ。それでも聞きたいんだよ」
「…………………………」
沈黙。
「……駄目……か」
「………あぁ。俺はそういう気持ちを持つことに意味を感じないからな」
「そう…………か……」
「あぁ……………」
………………………………
「て、天王!そろそろ帰らなくていいの?」
「ん……あ、あぁ。そうだな…………。それじゃあ、また明日、学校で」
「う、うん」
そう言って天王は去って行った。
「…姉さん、本気?」
姉さんは笑顔で、
「本気、本気!『本気』と書いて『マジ』と読むくらい本気!」
「それ具体的にはどれくらいよ………」
しかし、まさかこんな風になるとは思ってもいなかった。
姉さんはご機嫌のようだ。実際姉さんは学校がそう遠くでもないし、うちの卒業生だから来ようと思えば来れるだろうが……。
姉さんはまだ顔を赤くしていた。やはりそれだけ天王とのキスがうれしかったんだろう。
「…………天王のファーストキス……か…………」
私はまさか本当に姉が天王を釣りに来るとは思っていなかったので、かなり驚いていた。
それに恋してキスまでするとは……。いや、まぁ私は昨日裸見せたけど…………。
それにしても、私は今異常なほど姉を羨ましいと思っている。
自分の気持ちに正直に天王に告白できる所とか、天王とキスしたりとか……。
私はやはりそうなのだ。自分は好きなのにそう言うことはできない。
恥ずかしいとか以前に嫌いになられたくないとか、告白を断られた後ぎくしゃくしないだろうかとか、そういう事を考えてしまうのだ。
その点、姉は凄い。自分の性格を知られた男子に告白をできるなんて流石だ。
……でも、例えどんなことがあってもこれは覆らない。どんなことがあっても、私のこの気持ちだけは、絶対に。
「姉さん」
私は姉に声をかけた。
「ん?なんだ?」
私は姉に宣戦布告をする。
「私は絶対に負けないよ。姉さんにも他の誰にも天王は渡さない。
だって天王は…………」
ここで息を吸い込み、
「私が心から愛しているヒトだからねっ!」
<悪魔の手先 番外編”水岡家の食卓in姉妹 @4完結編”完>
=作者より=
いかがでしたでしょうか?まさかの天王の取り合いに発展するとは思っていなかったでしょう!
今後もまだ多少このシリーズは続けていきますが、その中でもこの2人はいろいろやってくれると思います。
いろいろ拗(こじ)れさせたいです。こういうの好きです、大好物です。
自分の現実世界のことでも、作者自身が絡んでないことだったら大好物です。
面白いです、本当に。こういうのって周りから見るのが一番楽しいんだと作者は思います。(←最低かもね)
まぁこいつらは、いずれ更に発展させていくのでよろしくお願いします。
それはともかく、次回はもっとギャグ要素を盛り込んでいきたいと思います。
今のところ本編で紹介していた『とある出本の勉強会』をやろうと思っていますのでよろしくお願いします。
それでは、以下恒例のご挨拶です。
それでは、このような拙い小説に時間をかけてくださったあなたに感謝を。次回作も乞うご期待!!
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