とあるゾンビの話 作:ユウ
「おめでとうございます!」
暗闇の中で、市来早苗(いちきさなえ)はそんな明るい声を聞いていた。
――誰……?
「貴女は晴れてゾンビとして生き返りました!」
――は?
暗闇の中で妙にハイテンションに喋り続ける女にツッコミを入れる前に、早苗はゆっくりと目を開けた。
*
「――! 早苗!」
目を覚ましたとき始めに目に飛び込んできたのは、母親の顔だった。
そしで早苗はなぜか病院のベットで寝ており、よく見てみれば腕に包帯が隙間無く巻かれていた。
「良かった……!目、覚ましたのね!」
ちょっとお医者さんに知らせてくるから、と母は言い残し、早苗の病室から廊下へと走っていった。
「……ぞん、び?」
早苗は体の上半身だけをゆっくり起こそうとする。
「いたっ」
しかし、起き上がろうとしたときに痛みが走り、ベットに倒れこんだ。
ゾンビ――暗闇の中で聞いた女の声が、まだ耳に貼りついてこだましていた。
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