鈴と柚 第6章  作:ruri

 鈴と柚  第6章 なぜ悩むの?

 もうすぐ行くんだ。不思議だった。私が普通にこの状況を受け入れて
今生死のトンネルとやらに向かって行ってるのが。もしかしたら、これ
は一つの奇跡なのかも知れない。
 でも私には、心配事があった。それは、鈴の表情がおかしい事だ。鈴
はさっきから、ずっとうつむいている。目線が落ちていて、悲しい顔を
している。それに、ため息ばかりついているのだ。死んでるんだけど、
悩み事があれば言ってほしい。
 …鈴はいつもそうだ。いつも独りで何かを背負っている。鈴はすごく
友達が多かったし、いつも笑顔だったけど、だからこそ、独りで背負っ
ているものは重く見えた。私だって、力になりたいのに……
「鈴。」
 鈴はゆっくり振り向いた。その顔はひどく暗かった。
「…何?」
「あ…ええっと、あの、行かない…の?」
 鈴の目が開いた。早く行きたいのは普通の事だと思ったが、鈴の顔は
驚いているように見えた。
「へえ…そんなに行きたいんだ…」
 はあ?
「ねえ!鈴、悩み事があるんでしょ?言ってみてよ。ね?」
 鈴の目から、涙が流れた。
「ごめん。これだけは言えない。柚姉を無事生き返らせるには、こうす
 るしかないの。ずっとため息ついてて、わざとらしいと思われたかも
 知れない。でも、絶対言えないの!全部柚姉の為なんだから!少しは
 察してよ!!私だって頑張ってるんだよ!いつもいつもプレッシャー
 だったんだから!」
 鈴の本音はすごく重かった。私も、泣けてきちゃいそうだった。
「ごめん。鈴がそういう風に思ってるなんて、全然知らなかった。」
「…私もごめん。大丈夫。そのうちわかるよ。」
 いやでも、知ることになるよ……


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