鈴と柚 第9章  作:ruri

  第9章 優し過ぎる嘘
 
 だれだろう?泣いてるこの子は。
 なぜだろう?この子が泣いてるのは。

 神様。私を叱ってください。
 
 私は、また嘘をつきました。

 「どうして?どうして鈴があ!鈴!」
 柚が叫ぶ。そう。一度喰われたら終わり。少し経つと、全ての
世界から記憶だけ残されて、魂は完全に消えてしまうのだ。
「こんなことになるなら、生き返るなんて言わなきゃよかった!」
「言わないで!!」
 柚は驚いたが、すぐに静かになった。鈴の身体はもう消えると
いうのに、精一杯の声を出して、すごく疲労した顔をしたから、
うだうだずっと言いたくはなかった。
「私、生き返れないの。」
 …どういうことだろう?じゃあ、今までの話は、嘘だったって
言うの?
「ごめんね。私さ、2年前に死んだじゃんか。だから、今生き返
 ると、時空がおかしくなっちゃうの。」
 なにそれ?鈴はいつもそうだよね。いっつも約束を破ってさ…
 私を助けてくれるんだ…
 だからこそ、鈴がいつか生まれ変わって、全然関係のない人に
なってしまうのが、私には耐えられない。
 柚が泣きだす。涙が止まらない。鈴の優しさが嬉しい。鈴の存
在が消えるのが悲しい。
 鈴の身体がだんだんと灰になっていくのが見える。もうすぐ、
「消える」のだ。
「生き返ったら、死ぬ3日前に戻るんだ。だから、何か運命を変
 えるようなことをするの。」
 鈴の眼から、涙がこぼれる。
「わかった?」
 鈴の腰の所まで灰になってきてる。でも言わせてよ。これだけ
でいいからさ。
 鈴が柚の方に手を伸ばしてきた。最後に一度だけ、鈴に触れて
いたかった。
「鈴。ありが…」
 何もかも遅かった。鈴の身体は全て灰になり、残った魂のよう
なものがどこかへ消え去った。
 柚は鈴がさっきいた場所に、「鈴がいた証」と指で書いた。
 そして、柚は落ちていた地図を手に取り、生死のトンネルへと
走った。
 2分ぐらいすると着いた。案外近くにあったので良かった。
 生死のトンネルへと、一歩踏み出そうとした。
「鈴。あんたがくれた命、一生大切にするよ。」
 こうして、柚は生死のトンネルへと姿を消した。


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