紅の月1 『平穏と変化』 作:ムク
「今夜は月が紅い」
「あぁ。不吉なことの前触れかもな」
紅き月は何を見るのだろう。
彼らを待つものは何か。
それを知りうるのは紅の月のみである。
情熱と希望に満ちた紅?
どす黒い恐怖の血の紅?
ジリリリリリリリ!
喧しい目覚まし時計の声で俺は目覚める。
「・・・・・」
目覚めの悪さは天下一品。
半分夢の世界から抜けられないまま、学校の準備を始める。
1年間も同じことを繰り返したから、目を閉じても出来る。
・・・・・たぶん。
ピーンポーーン!
チャイムの音が鳴り響く。
「圭太〜!航平くんきてるわよ!」
母親の大声で完全に覚醒した俺は、階段を半ば転がるように降りて行く。
「航平おはよっ!」
「はよ」
彼は西野航平(ニシノコウヘイ)。
俺と同じ17歳の高校2年生。
185cmの長身を活かしてバスケ部のキャプテンとなった。
彫りの深い顔と人懐っこい笑顔、全く気取らないフェミニスト。
女子は勿論、男子にも人気が高い。
そんな航平と俺は幼稚園からの腐れ縁。
小学校、中学校とクラスまで同じ。
部活動こそ違うものの、彼とは深い絆で結ばれている。
・・・かもしれない。
そして航平と俺は学校へ向かう。
会話が恋の話になったとき俺は冗談交じりに言った。
「お前モテるんだからよ、テキトーにオッケーして彼女作っちゃえよ!」
その瞬間航平は俺の胸倉を掴み怒鳴った。
「調子に乗ってんじゃねぇ!」
そして舌打ちをしてこちらを睨みつけると呆然とする俺を残し走り去ってしまった。
「え・・・あ・・」
俺が言葉を失っていると、後ろから声がした。
「如月おはよ!」
振り向くとそこに立っていたのはクラスメートの女子。
「あぁ、谷村か」
溜息をついて言うと、彼女は膨れた。
「あぁ、谷村かって何よ!可愛い彼女様が挨拶してやったのに!」
そう、谷村は俺の彼女。
それから申し遅れたが俺は如月圭太(キサラギケイタ)。
青葉高校二年三組。
青葉高校は何気に進学校。
まぁ大したレベルではないが。
俺は部活は無所属。
委員会や習い事もしていないし、授業中は熟睡する。
その為、無所属、無気力、無魂(?)の三拍子、スリーエム(3M)で名高い。
しかし3Mは意外とモテる。
一応175cmの身長とそこそこ良い容姿を持っている。
航平には負けるが。
それから俺の彼女。
谷村亜依璃(タニムラアイリ)。
通称アリ。
青葉の二年三組でクラストップの成績。
強気な性格だが実は硝子のハートの持ち主。
モデルのようなスタイルと大きな目の学校のマドンナである。
ソフトテニス部の副キャプテンをしている。
何故そんな彼女と俺が付き合っているかというと・・・。
なんとアリからの猛烈なアタックと俺からの告白だった。
俺はそんなアリを心から愛している。
「んで?何があったの?」
アリが先ほどのことを問う。
「何でもないっ!そんな事より学校行くぞ!」
コイツに弱さを見せるのは癪だ。
「もぉ!」
学校に着くと掲示板前に人だかりが出来ている。
「何だろ」
アリの呟き。
人をかき分けて前のほうに進む。
そこに張り出されていたのは一枚の紙切れ。
それを見た俺とアリは同時に言葉を発する。
「は?」「え?」
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